車通勤の途中に、踏切があります。
JRと西鉄貝塚線が並んで走る線路なので、結構幅の広い踏切です。
渡っている途中で、警報機が鳴り出して慌てることも結構ありますし、線路がいくつも敷かれているしカーブにもなっている所なので、でこぼこも大きく、自転車がゆらゆらガタガタと進んでいる横を、そろそろと通りぬける時などはひやひやする踏切です。
先日の朝、遮断機が降りているところに行き合わせ、遮断機から2台目で停車していた
時のできことです。
前の車の運転席から女性が降りてきたのです。
前の車はボックス型で大きくて、踏切内の様子が全く見えなかったので、何が起こったの
かわからずボンヤリ見ていると、その女性が、降りている遮断機を手で押し上げているのが見え、その車の左側から車いすが現れました。
70代ぐらいの女性で、下肢だけでなく上肢にも障がいがあるようで、手動の車いすでしたが、誰かに押してもらっているようでした。車の陰から車いすを押す30~40代の男性が現れました。
そうか!踏切を渡る途中でチンチンチンチンと鳴り出して、慌てているこの方たちを前の車から見ていた女性が、遮断機を上げてあげたのか、「間に合ってよかったな」と、他人事ながらホッとして、電車が通り過ぎるのを待ちました。
ところが、コトはそれだけで終わりませんでした。
路肩の敷石や砂利を、女性が乗った車いすが越えられずに、ヘルパーと思しき男性が四苦八苦されているのです。
あれあれ、このヘルパーさん下手だなあ、大した高さでもない縁石を越えられないのかなあと見ていると、近くにいた男性が近づいて手伝って、やっと平らな歩道に移ることができました。
よかったよかったと思いながら、遮断機が上がったので、前の車の後を追って踏切に踏み込みました。
踏切の向こうは国道3号線で、踏切を渡るとすぐに四つ角があって、車が数台しか止まれない狭い道路なのですが、その狭い道路に、車が1台停まっていて、年配の男性が1人運転席の横に立って、何やら心配そうに踏切の方を見ていました。
丁度信号は青だったので、その車の脇を通り過ぎて、先を急ぎました。
ただ、ふつうは絶対停めない、踏切と四つ角に挟まれた狭い場所に停まっていた車、心配気に立っていた男性、車いすの扱いが下手なヘルパーさん、・・・などいくつもの不思議な光景がどうにも腑に落ちなくて、運転しながら、さっき見たエピソードの切れ切れを貼り合わせてみました。
これならら筋の通るかな?というストーリーが、こんなストーリーです。
・車いすを押していた30~40代の、車いすを押していた男性は、ヘルパーではなかった。
・たまたま踏切内で、車いすを使う高齢の女性とすれ違い、渡りきったところで踏切の警報
機が鳴り出した。
・心配して振り返ると、遮断機は降りているのに、車いすの女性はまだ踏切の中だった。
・とても間に合いそうにないと見て取って、その男性が踏切内に走って戻って、車いすを押
して踏切の外に出そうとした。
・その様子を見て、私の前の車の女性が遮断機を押し上げて、車いすの女性と男性が通り抜
けられるように助けた。
・そうして、辛うじてお2人は無事だった!
・踏切の外に出ても、段差のある道を漕いで行けそうにない高齢女性の車いすを放っておけ
ず、押してあげていた。
・その男性が乗っていた車を運転していた男性は心配して、戻ってくるのを待っていたか
ら、ふつう停車するような場所ではないところに車を停めていた。
「なんで、車いすを使いこなせそうにない高齢の女性が1人で踏切内にいたの?」という疑問は解けませんでしたが、「たまたま通りすがりの男性が」「遮断機の下りた中に駆け込んで」「車いすに乗った高齢の女性を助けようとした」「見ていた女性が」「遮断機を押し上げて2人を踏切外に出した」のは、間違いないのではないかと思います。
一瞬の出来事でした。
「なんとかしなくちゃ!」という、とっさの行動が、高齢の女性の、そして助けようとした男性の命を救いました。
今でもその光景がまざまざと思い浮かび、その度に胸が熱くなります。