「Aさんが、定着支援も終わって、いよいよ卒業ですよ~」と、Aさんを長く支援してきたスタッフの感慨深げな報告を聞きました。

「Aさんが? あ~あ、そうか!そうだよねー」と、記憶にあるAさんのたたずまいを思い浮かべました。

「もう、何年になるのかしらねえ?10年位かなあ?もっとかなあ?」と指折り数え、昔の記録を開いてみたところ、利用を開始されてから13年余りが過ぎていました。

 発達障がいのあるAさんが、ジョブサポートの利用を開始された頃は、学校生活の中でたくさんの傷を負ってこられただろうなと思われる様子で、みんなと一緒の部屋でお弁当を食べることすらできませんでした。

作業の時間は、みんなと一緒に大きな部屋で作業することができましたが、休憩時間は恐怖が抜けず、別室で1人お昼の時間を過ごされることが、ずいぶん長く続きました。

 少しずつ少しずついろいろな作業にチャレンジし、できることが増え、Aさんなしには、作業全体が成り立たないほどに、Aさんの存在感が大きくなるにつれ、自信も少しずつ持てるようになって、いつの頃からかお弁当も同じ部屋で食べられるようになられていました。

 生活訓練の3年を経て、就労継続支援B型での6年間で、どの作業も安心して任せられる事業所の大黒柱になっておられました。スタッフは「Aさんが居なくなると困るねえ」「誰がAさんのカバーができるだろうかね、無理だろうね」と言いつつ、就労移行に進むようにAさんの心の準備を少しずつ支援していきました。

そうそう、この間には、グループホームでの自立も果たされました。

また、長く苦手だったお父さんとの関係も、Aさんの頑張りを喜んでもらえるようになって、だんだんと穏やかになっていったようで、そうした面でも生きていくことへの自信と意欲を重ねて来られたのでした。

 そして、いよいよ就労移行の利用を始められました。

これまでに、じっくりと積み上げて来られたので、1年過ぎないうちにトライアル雇用が始まり、そのまま採用となりました。

それから3年間定着支援を利用され、いよいよ卒業となったのでした。

焦ることなく、ご自分のペースで頑張って来られました。

この間、Aさんのペースを見守り、ずっと寄り添って来られたお母様の愛情も大きな支えだったと思います。

 Aさん、ご卒業おめでとうございます。

Aさんの後には、Aさんと同じように、社会の中で、自分の力を最大限に発揮して働き、生きていきたいと頑張っている後輩がたくさん続いています。

 どうぞ、よい人生を!