「異次元の子育て支援」という言葉が飛び交っています。

子どもは、みんなで育てましょう、子どもは、私たちみんなの未来であり宝物だから大切に育てましょう、子どもを大切にするだけでなく子育て中の親の大変さを社会全体で分かち合いましょう、みんなで親を支えましょう・・・ということではなく、「生まれる子どもが減って、人口が減り続けている。国力が落ちるぞ」という国の都合に聞こえますし、「子どもが増えたら予算が増える」というわけ分からない発言も出て、誰のための施策なのか?疑問が膨らみます。

働きながら3人の子どもを育ててきた私の経験を振り返っても、確かに子育ては大変です。24時間しかない1日の中で、年齢も性別も違う、1人1人個性ある子ども3人を、食べさせ眠らせ排泄させ遊ばせながら、家事をやりこなしていたあの頃には、心身ともに鍛えられました。少々ゴミが落ちていても目をつぶる図太さ(横着さ)も身に付きました。

足りない時間を全力疾走をしつつも、異星人だった赤ん坊が、人間の子どもになり、日本語を話す子どもに育っていく、ものすごい変化の只中を伴走できたことは、他に代えがたい貴重な宝物です。「私の子どもに生まれてくれてありがとう」「親にしてくれてありがとう」という思いは、嘘偽りない気持ちでした。

それでも、その一方で、たまには「一人になりたい!」「食べたい時に食べたい物を自由に食べたい!」「新聞を読みたい!」「眠りたい!」・・・・等々、思ったものでした。

当法人にも、当然のことながらお母さんやお父さんのスタッフがいます。働きながら、子育ての役割も担っているのですから、実感を込めて大変だろうなあと思います。でも、この大変さが、仕事にも子育てにも、むしろ良かったとも思う面もありました。

発展途上の子どもたちへのいら立ちも、仕事に集中していると、夕方保育所に向かう時には「待ってるだろうな」と小走りになっていましたし、うまくいかなかった仕事や職場の人間関係の悩みも、子どもたちを相手の混乱の中に突入すると、忘却の彼方に飛んで行ってしまい、翌日には気持ちは切り替わっていました。この全速力で走り続ける10数年が、子育て中のお母さんスタッフやお父さんスタッフを鍛え上げてくれるだろうと、これも実感を込めて確信します。