ジョブサポート郷口の非常勤スタッフが1人退職し、その後任に決まったのがスリランカ人の女性です。
 採用試験をした時の、課題の意図を理解しスピーディに処理する能力や、丁寧な作業ぶりがこちらの要求レベルにマッチしていましたが、母語はシンハリ語で、英語での会話はできますが、来日して間もないので、日本語が全くできません。
 面接は、5年前から日本に暮らすお連れ合いの通訳で辛うじて行うことができたぐらいでした。
 採用試験に立ち会った担当者全員、採用したいという意見でしたが、さて言葉の壁をどう乗り越えるか?
 スタッフの1人がオーストラリアで暮らしていた経験があって英会話は慣れていること、非常勤スタッフなので、役目は作業の準備やチェック等作業に関わる仕事がメインで、利用者さんとのコミュニケーションは当面の間不要であること、翻訳機が使えること、お連れ合いの日本語は、電話で話すことができるぐらいレベルだったし、彼女の感度のよさから考えると、しばらくすればコミュニケーションは取れるようになると思われることなどを踏まえて採用することにしました。

 採用に当たっては、雇用契約書や就業規則等、たくさんの文書を使いますが、ネットを通して英語に翻訳することができ、雇用条件も、事業所の目的や考え方も、毎日の仕事の基本や服装や掃除の仕方まで伝わったようです。
 ちなみに、スリランカでは「障がい者は施設にいて、働いていない」とのことでした。

 私が知らなかっただけかもしれませんが、初めて使った翻訳機には驚きました。
 掌に乗るぐらいの小さな翻訳機で、日本語をシンハリ語へ、シンハリ語を日本語へ、瞬時に話し言葉と文章で翻訳してくれるので、仕事をしながら使うことができます。いざという時に頼もしいツールです。

 朝出勤すると「おはようございます」と、笑顔で挨拶し「自分のできることは何でもやります」「教えてください」という意欲的な態度と、同僚として受け入れたスタッフの気配りも相まって、今のところ「伝わらない」「困ったな」ということは起きていません。
 ジョブサポート郷口のスタッフには、ジョブ歴10年を超すベテランの中国人もいますし、子育て中の人も、育児休業中の人もいます。
 また、さまざまな障がいのある利用者さんへの支援を仕事に選んだスタッフにとって、どのように伝えたら伝わるか?どんな環境を用意すれば、目標レベルの結果を出してもらえるか?等々、常に相手のわかりやすさを考え、正確に伝え結果を出すための工夫するのが日常の仕事であり、言葉でコミュニケーションが取れない彼女と一緒に仕事をするのは、そのバリエーションの1つでした。
 日本語が全くできないスリランカ人を雇用したとスタッフに伝えた時、「エー?!」と拒否する人は一人もおらず、瞬時に「どうしたらよいか?」に切り替わったスタッフの顔を見て、とても誇らしく思いました。

 福岡ジョブサポートは、「誰もが働きやすい地域社会を創ろう」を理念の一つとして掲げています。
 障がいのある人が「職場で働く風景」が当たり前になるための取り組みは、いろいろな条件や背景を持つ人が混ざって働く“新しい職場文化”や新しい“新しい地域社会”を創る推進役になるのではないかと考えて、20数年障がいのある方への就労支援に取り組んできましたが、今回のエピソードは、まさに「働く障がい者」は「誰もが働きやすい職場や地域を創る開拓者」だと確信できる出来事でした。

 「障がい者が働きやすい職場は、誰もが働きやすい職場なのです」