少し前になりますが、西日本新聞に連載中のコラムに心惹かれる一文がありました。
 執筆者は、NHK交響楽団第1コンサートマスターの篠崎史紀さん。

 小さい頃に、お父様からこんなことを諭されたそうです。
「短所とは大人になっても治るものじゃないんだ。一生治らないものなんだ。
 だけど、どんな短所なのかを知ってないといけないし、自分自身で気をつけないといけないんだ。
 それとは別に、人には長所と言うものがある。
 長所は一生懸命自分で伸ばして行かなきゃいけないし、自分の長所を知っているとその伸びるスピードは光の速度より速くなるんだ。
 そして、その伸びた長所が短所を包んだ時に個性というものが生まれるんだよ!」

 お父様から言われたときには、よく理解していなかったと思うが、元気になったことは確かだと書かれていましたから、何かうまくいかないことがあってガッカリと落ち込んでいた時、お父様が慰め諭されたのでしょうか。

「短所は大人になっても治らないんだ」「一生治らないんだ」とは、身もふたもない言葉ですが、続けて「だけど、どんな短所なのかを知ってないといけないし、自分自身で気をつけないといけないんだ」と書かれています。
自分の短所を率直に認める(知る)こと、自分で気が付くことで、次に進むことができるのだと言われているのでしょう。

 そして「人には長所と言うものがある」「長所は一生懸命自分で伸ばして行かなきゃいけない」「自分の長所を知っているとその伸びは、すごいんだよ!」に繋がります。
 長所を伸ばせばよいという意味だけでなく、「授かった長所は、自分で一生懸命伸ばしていく責務があるんだよ」という諭しも含まれています。

 思うようにいかないこともある現実は、現実として知った(受け入れた)上で、一生懸命努力することの大切さと、それらが個性を生み出すのだと、その展望をも示され励まされています。大人として、父親として、すごい方です。
 小さい頃走るのが遅かった私は、今も遅いままです。確かに、「大人になっても治らない」のです。
 小さい頃「なんで走るのが遅いんかねえ」と嘆くのではなく、「速い人もいるけど遅い人もいるんだよ」と言って欲しかったなあと思います。

 この篠崎氏のお父様の言葉は、福岡ジョブサポートが障がいのある方への支援の基本としていることとも重なります。

 〇誰にもできないことや難しいことがあるし、得意なことややりたいこともあります。
 〇できないことは、他の方法を教えてもらったり誰かに助けてもらえばよいのです。
 〇得意なことややりたいことは、がんばれるし続けることもできるから伸びます。
 〇得意なことは何ですか?何がしたいですか?教えてください。いっしょにがんばって伸ばしていきましょう。
 〇助けて欲しいことがある時に、スムーズに伝わる方法をいっしょに考え、練習もしましょう。

 障がいの有無に関係なく誰にも言えることだと思いますが、自分の短所や長所を知ることは、自分だけではなかなか難しくて、他者の助けが必要です。
 私たち支援者の役目は、ご自分の長所と短所に気づかれるキッカケを作り、現実を知り納得したうえで、長所を伸ばし、ご自分の個性を創り出して行かれるように、いっしょに考え後押しすることだと考えています。