7月1日、Aさんが3ヵ月のトライアル雇用を経て、正式に採用されました。
 就労継続支援B型事業所“ジョブサポート郷口”から就労移行支援事業所“ジョブサポート馬出”を経て、見事一般就労を成し遂げられたのです。

 Aさんは、病気によって人生の半ばで方向転換を余儀なくされ、2008年“ジョブサポート馬出”の利用を始められました。
 片麻痺と高次脳機能障がいで身体障害者手帳1級でした。
 入力の仕事をしたいとのご希望で、パソコンに向かう1日が始まりました。
前の仕事がパソコンを扱う仕事だったので、パソコン教室を受講しなくてもよいと言われ、パソコンの前に座って黙々と入力作業に打ち込んでおられた姿をよく覚えています。
 利用が始まったころは、A41枚分入力するのに2日もかかっていて「入力の仕事をして稼ぐ」には遠い現実がありました。

 人生の途中で障がいを負った方は、現実の自分を受け入れるのに大変苦労されます。
 Aさんも葛藤は当然あったことだろうと思いますが、私たちに、イライラした様子や焦った様子を見せられたことはありませんでした。
 物静かで「黙々と・・・」がぴったりな方ですが、おしゃべりをすると意外や明るく笑いの好きな方でしたから、根は前向きで楽観的だったのでしょう。
 翌年、就労継続支援B型事業“ジョブサポート郷口”に移られました。
 以来、2016年末まで8年半通い続けてコツコツと入力作業に向かっておられました。
 当初は、週に1回から始まりましたが、少しずつ利用日が増え、毎日来られるのが普通になったのがいつ頃だったでしょうか。
 10年間の「黙々」「コツコツ」で、心身の安定と職業スキルや入力作業の感覚を鍛え上げていかれました。

 ご自分の口から「就職したい」という言葉は出てきませんでしたが、就職に対するお気持ちを、何度も確認してきました。「いずれは就職したいけど・・」という返事で、「慣れた環境で、やりがいのある仕事があり、工賃も稼げている」という現状を受け入れておられたのでしょう。

 年数を重ねるにつれ、入力スピードは速くなくても、少しずつミスは減ってきましたし、入力作業へのこだわりも、次第に和らぎ、他の作業も躊躇なくされるようになって、工賃もだんだんと上がってきていました。
 何よりも、心身の安定はAさんの強みです。急な休みはほぼありません。
「着実な働き手であること」に加えて、「職場で信頼できる仲間として受け入れられるチカラ」をお持ちだと判断して、「一般就労を考えてみませんか?」とお尋ねしてみました。
 少し驚いておられましたが、「チャレンジしたい」と即答でした。だんだんと仕事に自信を持てるようになり、お気持ちは動いていたのかもしれません。

 1カ月後には就労移行支援事業所“ジョブサポート馬出”に移行して、就職に向けたトレーニングが始まりました。
 パソコンスキルも、パソコン教室でブラッシュアップしましたし、様々なトレーニングにも、持ち前の「前向きで楽天的」を発揮され、コツコツと急がず慌てず積み上げて行かれました。

 何度かの実習を経て、見事企業就労を達成されました。
 Aさんおめでとうございます!!
 Aさんの、穏やかな明るさと「黙々」「コツコツ」を土台にした信頼性が、職場で歓迎されたのだと思います。
 Aさんは、人生の中途で重い障がいを負った方たちの希望の星です。

 今の世の中、すごいスピードで動いていて、みんな必死で走っています。
 でも、「速い」「強い」だけを価値として走って行くと、その先には今以上に不安定な社会が待っているのではないかと危惧します。
 誰もが持っている自分の弱さを受け入れて、お互いを尊重しあい、穏やかな生活をかみしめられる社会には、Aさんのような方や、Aさんを評価し採用するような企業がたくさん存在するのだろうと夢想しています。